ひっこし犬もも


北海道 二代目ゆず
by momosukemama
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いないということ

 門の塀の上に前足を乗せてわれわれの帰りをまっているハラスがいた。

郵便物が多い関係から普通より大型の郵便受けをつけている。
その郵便受けの上に身体を乗せ、前足を門塀にもたれさせかけて、
しつこく何時間でも帰りを待っているのである。

いじらしいというか、人間ならば決してしそうにないそういう「待つ」態度そのものが、
どんなにわれわれに「待っているものがいた」喜びを与えていてくれたか知れなかった。

彼が私たちの足音に耳をとがらせ、私たちを見るなりそこから飛び降りて迎えに出るとき、
全身からあふれでるその安堵の情が、私たちの気持ちをゆすった。

 ハラスの死後、門先を掃除している妻に見知らぬ老婦人が声をかけ、犬の消息をたずねたことがあった。
妻が死んだことを告げると、「門の上に足を乗せて待っていた姿は、
私どもが見てもほほえましくなりましたわ」と言って懐かしがったそうである。

そういう意味でも彼は我が家の一員なのであった。

引用「ハラスのいた日々」中野孝次


ももを失ったことを表現しきれず、我がことながら、わかりきれないジレンマは、
大変わかりやすく、この本に書いてありました。
犬を失ったことが書いてある本はたくさんありますが、古い本ですが、文学者の表現は感動しました。
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by momosukemama | 2012-11-05 10:22 | 日常
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